室内環境対策
最終更新日:平成30年3月15日 | 公開日:平成29年4月21日
室内環境対策(ダニ・カビ)
気管支ぜん息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の中には、ダニのフンやカビなど(いわゆるハウスダスト )を吸い込んで、アレルギー症状を引き起こすものがあります。ダニやカビはどこにでもいるものですが、増えすぎないような環境づくりが大切です。
ここでは、「1. ダニ対策のポイント」「2. カビ対策のポイント」をお伝えします。
1. ダニ対策のポイント
ダニは乾燥に弱く、増殖に60%以上の湿度が必要です。ダニを増やさないためには、寝具類は日光や布団乾燥機でよく乾かすことが重要です。また、ダニのフンや死骸がアレルゲンとなるため、寝具類を乾かした後にはじゅうたんや畳の掃除機がけを必ず行う必要があります。ゆっくり掃除機のノズルを動かしながら吸引することで、ダニだけではなく、ダニのフンや死骸などのアレルゲンを効果的に吸い取ることが大切です。寝具類は、干した後の掃除機がけが有効です。また、ダニのフンなどのアレルゲンは水で洗い流せるので、寝具類やぬいぐるみは洗える材質のものを選び、定期的に洗います。
以下は、ダニについて詳しく紹介しています。
(1)ダニとは
ダニは節足動物で、昆虫とは遠い親戚、クモとは近い親戚です。体の形態が、クモや昆虫とは違っています(図1)。
世界で約4万種のダニが知られていて、広く環境中に生育しています。具体的には、動植物に寄生するもの、土中や水中などに生息するもの等、様々な生活様式がみられます。それらの多くは静かに暮らしていますが、一部は私たちの健康に影響を及ぼします。
私たちの最も身近に生息するものはヒョウヒダニ類※で(写真1・2)、体長0.3~0.5ミリメートルと微小なため肉眼では見えません。ヒョウヒダニ類は、人の皮膚から落下するフケや垢、お菓子等の食べこぼし等を栄養とし、人から吸血したり咬むことはありませんが、ダニそのもの・死骸・フンがアレルギー症状(気管支ぜん息、鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎など)の原因となります。
ヒョウヒダニ類
ここでは、コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニなどのチリダニ科ヒョウヒダニ属のダニ類を「ヒョウヒダニ類」としています。別名「チリダニ」とも呼ばれます。
図1ダニ・クモ・昆虫の形態の違い
写真1 ヒョウヒダニ類(実体顕微鏡)
写真2 ヒョウヒダニ類(走査電子顕微鏡)
※写真1、写真2(提供:東京都健康安全研究センター薬事環境科学部)
(2)ヒョウヒダニ類が好む場所
ダニが生きていくには次の3つの条件が必要です。
- 餌(えさ):人の垢(あか)やカビ・食べこぼしなど。
- 潜る場所:畳・じゅうたん・寝具などの狭い隙間。
- 温湿度:最適温度25~30℃、相対湿度60~80%。
家庭における居室内は、じゅうたんやソファーなどのダニの潜る所が多く、ダニにとって生育しやすい環境が整っています。特に近年の居室は、気密性が高いため、多量の水分が発生します。浴室や台所での換気が不十分だと、湿度が下がらずに結露がおきやすくなります。湿度が高いとダニの餌となるカビが生育し、ダニが住みやすい環境がつくられます。
家庭でよく見られるヒョウヒダニ類は高温・多湿な環境(25℃、湿度75%)のもとで卵から成虫になるのに約1ヶ月、メスは2~6ヶ月生存し約100個の卵を産みます。ネズミ算ならぬ“ダニ算”で、短期間に増殖します。年間を通してみられますが、通常、湿度の高い梅雨時に増えはじめ、夏期の7月下旬から9月上旬に最も数が多くなります。
(3)ダニのアレルゲンを減らすには
アレルギーの原因となるダニを減らすには、上記の3条件をできるだけなくすことが重要です。
具体的にその対策を述べます。
- 床面の掃除:じゅうたん・畳など床面、およびソファーなどを掃除器で十分吸い(1平方メートル当たり20秒ほど吸引*)、ダニの餌やアレルゲンであるダニやそのフンなどを除く。
*日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン2015」より - 寝具の処理:布団などは、晴れた日によく日に干す。干した後にそれらの表面を掃除器で吸う。丸洗いできる毛布や布団を使用する。布団・枕カバーやシーツをこまめに取り替える。
- ダニの潜ることの少ない素材の使用:床面を板張りやクッションフロア(フローリング)にしたり、布張りのソファーや椅子を合成皮革にする。ダニの通過できない高密度繊維の布団カバーやシーツはダニの防除に有効である。
- 乾燥:通気、換気や除湿に努め、室内の湿度を60%以下になるようする。梅雨時には除湿機を使用し、冬でも過剰に加湿器は使用しない。湿度を下げることはカビの予防にもつながる。
- 整理整頓:ヒョウヒダニ類は掃除の行き届かないところで繁殖する。日常的に掃除しやすいように家具類や押入れの整理整頓に心がけ、こまめに掃除する。
2. カビ対策
カビは、換気不足などの理由で湿度が高くなると発生します。天気の良い日の換気は、湿度を下げるため、カビ予防対策としてもっとも有効な方法です。換気が不足となる押し入れなどの収納スペースでは、スノコを利用することで空気の通り道を作り、換気を促進する方法が有効です。また、梅雨時など気候的に湿度が高まる季節では、除湿機やエアコンのドライ機能を活用し、湿度を下げるのも効果的です。
住まいの中では、浴室や台所など水蒸気を多く発生する場所があります。これらの部屋や場所には、換気扇が設置されているので、使用後はすぐには止めず、十分換気することを心がけましょう。特に、浴室の湿気対策のため、使用後の風呂の水は抜いておくことが重要です。
なお、薬剤を利用してカビの除去作業を行う際は、安全のために必ず十分な換気をしてください。また、作業にあたっては、カビ(胞子)が飛散して周りに広がらないように注意して下さい。
以下は、カビについて詳しく紹介しています。
(1)カビとは
カビは、胞子と呼ばれる生殖細胞(植物の種)と栄養分を吸収する菌糸という大きく2つの形態を持ち、環境中の水分と一定量の栄養があれば成長していきます。 目立つくらいに広がった場合、1円硬貨ほどの面積中に、かびの胞子が約1000億個以上存在します。菌糸状態での生育は局所に限定されていますが、胞子は飛散するので、急速に生息範囲が拡大します。
また、カビの胞子や菌糸自体がアレルゲンになります。胞子は、大きさは1ミリメートルの200分の1から20分の1くらいで、鼻粘膜や気管支などに定着しやすいことが知られています。
写真3 コウジカビ
写真4 クロカビ
写真5 アオカビ
*写真3~5(提供:東京都健康安全研究センター微生物部)
(2)カビが好む場所
カビは水分を必要とするので、居室内では、湿度が高い水まわりや、換気不足で高湿度になりやすい押入などに増殖します。これらの場所に付着したカビは、湿度の条件次第で範囲を広げていきます。
(3)カビの予防について
1. 浴室、洗面所のカビ予防
- 浴槽のお湯を抜き、最後によく洗う。
- 浴室の壁や天井や流しなどに石鹸の残り、毛や垢(あか)などを残さないようにする。
それらはカビの栄養になるので、できればお湯のシャワーでよく流し、最後に水のシャワーで温度を冷やすことがカビ予防になる。 - 浴室の壁、流し、洗面所の周り、洗濯機の周辺などの水滴を、タオルでよく拭き取る。水滴が残るとそこにカビの胞子が定着しやすくなるため、水分の除去が効果的である。
2. 玄関や靴箱などのカビ予防
- 靴は、靴箱にしまう前に日陰干しをするなど、水分を蒸発させる。
- 収納場所の換気をよくする。
- 長期間収納する場合には、汚れをよく落し、クリームなどで表面を保護し、カビの増殖を防ぐ。
3. 居間(リビングルーム)のカビ対策
- エアコンフィルターの清掃をこまめにする。長期間エアコンを使用しないと、フィルターには相当量のカビが生育しているおそれがある。この場合、使用にともなって胞子が居室内に飛散するので、フィルターについたほこりを除去するなどこまめな清掃が重要である。
- 目安として年に3~4回、少なくとも、冷房暖房シーズンの変わり目には実施する。
4. カーペットのカビ対策
- 居間などに敷かれたカーペットの掃除が不十分な場合、ほこりとともにカビが増えやすい。カーペットの掃除は、掃除機で吸引ノズルを毛を逆立てる方向に向けて吸引する。
- 丸洗いできれば、洗濯し、よく乾燥させる。
- できれば、畳の上にカーペットは敷かない。
5. 家具類(収納タンス)のカビ対策
- 家具を壁にぴったり付けると、換気不足となりカビが増えやすい高湿度環境になる。壁との隙間を5センチメートル以上あけて、空気の流れをよくすること大切である。
6. 押し入れ(クローゼット)のカビ対策
- 押し入れに入れたプラスチック収納ケースの衣類にもカビがつくことがあるので、収納容器の中に乾燥剤を入れると、カビ予防になる。
関連情報
住まいの中のアレルゲン対策 ~ぜん息の発作や悪化を防ぐために~
アレルゲンを減らすための効果的な取組を紹介したパンフレットです。(平成30年3月 東京都保健医療局発行)
独立行政法人環境再生保全機構 子どものぜん息&アレルギーシリーズ6「住まいの掃除はどうするの?」
独立行政法人環境再生保全機構が作成。
住まいの対策と環境づくりのポイントを解説したリーフレットです。
独立行政法人環境再生保全機構「ダニ対策の実践」
独立行政法人環境再生保全機構が作成。
ダニアレルゲンを減らすための環境整備の方法がわかりやすくまとめられたリーフレットです。
- 外部リンク
- 独立行政法人環境再生保全機構「ダニ対策の実践」
健康・快適居住環境の指針(平成28年度改定版)について
健康・快適居住環境とは
住まいの快適さは、そこに暮らす人々の生活の質にとって、とても大切な条件です。
また、住まいの環境は、暮らしの清潔さや健康を支える基本です。
しかし、近年、生活スタイルの多様化や建築様式の変化により、ダニやカビの発生、換気の不足や化学物質など、住まいの快適性を損なう問題点も見受けられます。
健康・快適居住環境の指針
そこで、東京都では、快適な居住環境の状態を示すガイドラインとして「健康・快適居住環境の指針」を作成し、健康を支える快適な住まい方を提言することとしました。
健康的に生活するには、どのようなことに注意して住めばよいのか、どのような問題があるのか、さらに、その問題を解決するためにはどのような改善をすればよいのか。
「健康・快適環境の指針」では、住まいの快適性を損なういくつかの問題点についてとりあげています。
- カビ
- ダニ
- 化学物質
- 換気不良
- 排水不良
- 騒音
指針の内容とチェックポイント
指針の内容は、健康を支える住まい方を具体的に提示し、また、「住まいの健康・快適度」を判断するための指標となる目標値も盛り込こんでいます。
内容ごとに、以下のように17分野に分けられ、37の指針で構成されています。
- 室内空気環境の管理
- 結露対策
- 室内のカビ対策
- 給水の管理
- 排水の管理
- ネズミ・生活害虫の対策
- ゴミの処理
- 不快な臭気
- 生活騒音・振動
- 清掃
- 採光・照明
- 室内の安全対策
- 家庭用品等の安全と衛生
- ペットとの生活
- 住居とアレルギー疾患
- 住宅の高気密化・高断熱化
- 乳幼児や高齢者の居住環境
健康・快適居住環境の指針:アレルギーに関連する分野の抜粋
- PDFダウンロード
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1 室内空気環境の管理(4.4MB)
2 結露対策(2.3MKB)
3 室内のカビ対策(2.0MB)
6 ネズミ・生活害虫の対策(3.3MB)
10 清掃(1.8MB)
15 住居とアレルギー疾患(3.2MB)
17 乳幼児や高齢者の居住環境(2.6MB)
※出典:「健康・快適居住環境の指針~健康を支える快適な住まいを目指して~」(平成28年度改定版)
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